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クラウドソーシングと翻訳のまとめ

最近はあちこちでクラウド、あるいはクラウドソーシングという言葉を目にするようになりました。このブログでも頻繁に登場しています。

クラウドソーシングという言葉が知られるようになったのは、Amazon Mechanical Turkが登場した頃でしょうか。このサービスの肝はプログラムで処理できない作業を人間が代行するというものであり、その人間はネット上に偏在する個人(クラウド)という位置づけでした。

ひるがえって翻訳業界。様々な支援ツールが導入されておりますが、翻訳そのものは人間が行っています。Amazon Mechanical Turkは単純作業を依頼するものでしたが、翻訳は誰でもができるわけではありません。分野ごとに常識があり、ジャーゴンがあります。好まれる文体があり、避けられる言葉遣いがあります。世間一般でいう「仕事」と、物理学用語の「仕事」とはまったく違うものです。しかし、CGMやWikiなどのメディアが一般化するにつれ、ネット上で増大する情報量は、翻訳者の処理できる量の伸びを追い越しています。

ここで登場するのが、機械翻訳とクラウドソーシング。機械翻訳は、それだけでは実用に耐える品質に結びつかないことから、原文を整備して(Simplified EnglishやControlled English)機械翻訳にかけたものを人間がチェックする形での運用は検討されていましたが、そのチェックの仕組みとしてクラウドを用いるケースが持ち上がっています。Microsoftはオンラインのマニュアルは機械翻訳で提供し、アクセスの多い情報だけは人が手を入れるという形で運用しています。このブログでも取り上げたIBMの事例はその発展的な形といえます。

最近ではもう一つ、クラウドで翻訳を行う事例が出てきました。耳にしたことのある方もいると思いますが、Facebookの日本語への翻訳は、クラウドが行いました。このクラウドの中身はFacebookのユーザーであり、翻訳とQAの仕組みをFacebookが提供し、その作業の大部分をボランティアの翻訳者が行いました。結果として、ローカライズにかかる費用は通常と比べて大幅に削減され、またスピードも非常に速かったということです。一方で、Facebookのライバルと言えるMySpaceはプロに翻訳を依頼しています。ビジネス用SNSのLinkedinはFacebook方式を採用しようとして、登録しているプロの翻訳者たちから猛反発を受けました。

ここで問題は、果たしてFacebok方式は応用できるのかという点です。この事例に対する反応は様々なものがありましたが、品質が高くない、単に安くて早いだけだということを指摘する意見がよく見られました。では単なる安物買いの銭失いかといえば、簡単に切り捨てることのできない部分もあります。

やや極論になりますが、Facebookが提供しているのはユーザー同士の繋がりであって、使い心地の良いインターフェイスではありません。我々のようなLSP側の人間は、翻訳がダメなものは使われないという発想をしがちですが、SNSのようなネットワーク外部性が強く働くメディアにおいては、広く使われているサービスの方が優先的に利用されます。いちはやく日本語版を出すということを目的とした場合には合理的な選択と言えます。

ところで、Facebookがどこまで意図しているかは分かりませんが、翻訳を通してユーザー同士の繋がりが強化され、より深い関わりが生まれてくるという側面があります(Linkedinはこの点で失敗しました)。さらに、ユーザーの求めるレベルで翻訳の品質が平衡するため、Facebookが品質の管理を行う必要がなくなります。

意地の悪い言い方をすれば、SNSの質というものはユーザーの質とイコールなのですが、それを翻訳に拡大させたということです。しかし、日本市場で先行するmixiとの競争のなかで、「現状」の品質で勝てるかといえば、そうではないと思います。規約が英語のままであったり、気持ち悪い点はまだあります。とはいえ、Facebookとmixiについては、CNET Japan オンラインパネルディスカッションにあった江島健太郎氏の意見が端的に示している通り、同列で扱うものではありません。

ともあれ、クラウドによる翻訳はコストや納期、品質だけでなく、その他の様々な要素も考慮したうえで導入の検討がなされるべきものと言えます。特に、LSPがクラウドでの翻訳を提供する場合には、仕事の再現性が高くない点が課題となってきます。この点は、現状の、翻訳メモリによって再利用性を高めることとは逆の方向を向くことでもあります。大規模の仕事よりは、小さな需要に対応するための仕組みとして捉えるのが良いのかも知れません。折しもmyGengoが話題になっていたり、この分野が注目すべき点は間違いありません。

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Kivaプロジェクトと翻訳

グラミン銀行総裁であるムハマド・ユヌス氏のノーベル平和賞をきっかけに注目されることになったマイクロファイナンス。これをネットを介し、開発途上国で融資を求めている人に提供しているのがKivaプロジェクトです。

自分の仕事のために資金を必要としている、主に発展途上国の小規模事業者に、個人が貸し付けを行うための仕組みを提供しています。

一回きりで相手の顔も見えない「寄付」ではなく、顔の見える「投資」により持続的に小規模事業者たちを支え、自分の出した資金がどのように使われ、返済されるかが見えるところが最大の特徴です。

貸し付けは、インターネットから誰でも気軽に行えます。

他の特徴としては、

  • 25$からの少額融資
  • 高い返済率(2009年1月の段階で、約97%)
  • 貸し手への返済金に利子はつかない

等があります。

Kiva -loans that change lives -

http://www.kiva.org/

融資を求める人の紹介文は英語で書いてあり、ユーザー(融資者)によって翻訳が行われています。まだ翻訳されていないものは、Google翻訳で表示されています。

翻訳される文章やドキュメントがどの場面で用いられ、顧客にとってどのような価値を生むのかは、LSPとして常に気に掛けている点です。それが、このように具体的に融資額などの形で見えるというのは、新たなお金の流れが生まれていることも相まって、とても新鮮に思えます。

facebookはユーザーの手によってローカライズされました(これについては、別にエントリを設けます)。Kivaプロジェクトの骨格は厳密な意味においてCGMであるとは言えないかも知れませんが、毎日のように増えていく情報をいかに翻訳していくかという問いに対するひとつの回答であると言えます。

※なお、Kivaと弊社とは資本関係、人的関係はありません。

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